3年前にお母さんを突然亡くした方がいます。それ以来、もともとあった期外収縮が何倍にも強くなり、「今度こそ自分も死ぬのではないか」という恐怖が、毎日のように襲ってくるようになりました。
ストレスは「気持ちの問題」では片付けられません。心臓の動きに、直接影響を与えることがあります。
ストレスが心臓の筋肉を「バグらせる」瞬間
強い精神的ショック——大切な人との別れ、経済的な危機、仕事上の追い詰められるようなプレッシャー——をきっかけに、心臓の一部の動きが一時的に弱くなる「たこつぼ心筋症」という状態があります。ストレスによって分泌されるホルモンが、心臓の筋肉に直接作用することで起こると考えられています。血管が詰まる心筋梗塞とは違うメカニズムですが、ストレスが実際に心臓の働きを変えてしまうという点で、決して軽視できるものではありません。
ある方は、会社経営のプレッシャーに加えて、認知症気味のお母さんが毎日「つらい、死ぬ、苦しい」と口にする精神的負担を一人で抱えていました。妻からは「気にしすぎないほうがいい」と流され、本音を話せる相手がいない。自分が倒れたら会社も家族も終わるというプレッシャーが、動悸への恐怖をさらに増幅させていました。ストレスの源が一つではなく、いくつも重なっている方ほど、心臓への影響は大きくなります。
ストレスは「減らす」より「耐性を育てる」
ストレスをゼロにできたら、それが一番いい。でも、現実的に人生からストレスを完全に取り除くことは難しい。だからこそおすすめしたいのは、ストレスに対する「耐性」を育てるという考え方です。
具体的には、4つのステップを意識してみてください。
- 気づく:イライラや不安、呼吸の浅さに「あ、今ストレスかかってるな」と気づくこと。気づくだけで、自動反応にブレーキがかかります
- 吐き出す:誰かに話す、紙に書く、声に出す。形はなんでもいい。頭の中に溜めたままにしないこと
- 発散する:体を動かす、歌う、泣く。感情を体の外に出す動作を持つこと
- 癒す:ほっとくつろぐ時間、何も考えない時間を5分でも10分でも持つこと
この4つのサイクルは、運動で筋力がつくのと同じ仕組みです。負荷をかけて、回復する。その繰り返しで、ストレスに対する体制が少しずつできあがっていきます。
一番危険なのは「場面」が脳に刻まれること
心臓ケアの観点で、特に注意したいストレスのパターンがあります。それは、症状が出た「場面」そのものを、脳が記憶してしまうことです。
先ほどの方も同じでした。3年前にお母さんが亡くなって以来、「大切な人が突然死ぬ」という体験が脳に深く刻まれ、自分の期外収縮に対する恐怖が何倍にも膨れ上がった。動悸そのものは以前からあったのに、お母さんの死という体験が加わったことで、脳が「これは命に関わる」と誤った意味づけをするようになったのです。
職場で強い動悸に襲われた方は、同じ職場に行くだけで症状が誘発されるようになることもあります。脳が、その場面自体を「危険」として記憶してしまうからです。この仕組みを知っておくだけでも、「また同じ場所で症状が出た」ことへの捉え方が変わってきます。
まとめ
ストレスは、たこつぼ心筋症のように心臓に直接影響を与えることがあります。大切なのは、ストレスをゼロにしようとすることではなく、気づく→吐き出す→発散する→癒すというサイクルで、耐性を育てていくこと。そして、脳が「場面」を記憶してしまう仕組みを知っておくことも、大きな助けになります。
※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。個別の症状については医療機関を受診してください。