24時間の心電図をつけた日に限って、動悸が出ない。
これを経験したことのある方は、少なくありません。普段は週に3〜4回はある。夜中に目が覚めるほど強く打つ日もある。それなのに、機械をつけて「さあ記録しよう」という日になると、驚くほど静かになる。
そして翌週、結果を聞きに行くと、こう言われます。「特に問題ありませんでした」。
いちばんつらいのは、証拠が残らないこと
このとき起きているのは、症状が消えたことではありません。症状があったという事実を、誰にも渡せない状態です。
痛みや不調は、外から見えません。骨折ならレントゲンがある。熱なら数字が出る。でも動悸は、出ているその瞬間に記録されなければ、どこにも残らない。
だから、こうなります。
- 医師には「異常なし」の記録しか渡らない
- 家族には「検査で問題なかったんでしょ」と受け取られる
- 自分だけが、あの夜の感覚を覚えている
この「自分だけが知っている」という状態が、不安をいちばん濃くします。相談したくても、証拠がない。証拠がないから、言えば言うほど「気にしすぎ」に見えてしまう。ここで黙ってしまう方が、とても多いのです。
なぜ、つけた日に限って出ないのか
正直にお伝えすると、ここに科学的な裏づけがあるわけではありません。ただ、相談を受けてきた中で、私はこう説明しています。
ひとつは、機械をつけると安心してしまうことです。「今日は何かあっても記録に残る」「見てもらえている」という感覚が、体の緊張をゆるめます。緊張がゆるめば、動悸も出にくくなる。
もうひとつは、「出なかったらどうしよう」と思っていることです。検査の日は、症状が出てほしい日です。でも、出てほしいと強く思うほど、頭の中では「出ない場面」のイメージのほうが濃くなっていく。脳の働きとしては、そう説明がつくかもしれません。
そして、身も蓋もない言い方をすると、人生ってそういうものですよね。ここぞという日に限って、いつものことが起きない。相談に来られる方も、この話をするときは笑っています。私は茶化したりはしませんが、心の中では「そういうものなんですよね」と思いながら聞いています。
もうひとつ、あまり気づかれていないことがあります。症状が出ない日は、思っているより多いのです。毎日出ている感覚があっても、実際に記録をつけてみると、出ていない日のほうが多かった。あるいは出ていても、忙しくて気づいていなかった。検査の日に出なかったのは、偶然というより、そういう日が元々たくさんあった、という見方もできます。
記録は、病院の機械だけではありません
ホルター心電図は、「その24時間に何が起きたか」を見る検査です。裏を返せば、それ以外の日のことは、自分で残すしかないということです。
ここで大事なのは、感情を書かないことです。
- ✕「夜中に動悸。すごく怖かった。死ぬかと思った」
- ○「23時40分、動悸。約3分。座って収まった」
感情を書くと、記録が「怖かった記憶の保管庫」になります。読み返すたびに、あの夜を追体験することになる。
事実だけを書くと、記録は情報になります。いつ、どのくらい、どうしたら収まったか。これは医師に渡せる材料になりますし、自分にとっても「何が起きているか」を眺める材料になります。
そして、事実だけの記録を続けていると、あることに気づきます。「大丈夫だった日」のほうが、数で勝ちはじめるのです。毎日出ていると思っていたものが、週に2回だった。3分で収まっていた。座れば落ち着いていた。記録が、不安の輪郭を小さくしていきます。
「異常なし」は、あなたの感覚を否定していません
検査で異常がなかったことと、あなたが感じた動悸が本物だったことは、両立します。ホルターは、その日の心臓の電気の流れを見ただけです。あなたが感じてきた夜の感覚を、なかったことにする検査ではありません。
証拠が残らなかった日を、自分で残していく。それが、次に医師と話すときの材料になり、家族に説明するときの言葉になり、そして自分自身が「思っていたより大丈夫だった」と気づくきっかけになります。
まとめ
ホルターをつけた日に限って動悸が出ないのは、珍しいことではありません。安心で緊張がゆるむこと、「出なかったら」というイメージが強くなること、そしてそもそも出ない日が多いこと。理由はいくつか考えられます。検査に映らなかった日は、自分で事実だけを記録する。感情を書かず、時刻・長さ・収まり方だけ残す。それが、あなたの感覚を「証拠」に変えていきます。
「異常なし」でも動悸が続くあなたへ
その症状には、ちゃんと理由があります。心臓リハビリ1,000例超の専門家が、病院では教えてくれない心臓ケアの方法を無料でお伝えしています。
📖 あわせて読みたい
※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。