水分は大事です。これは間違いありません。血液も、脳脊髄液も、リンパも液体です。新しい水を入れて古い水を出す。この循環が体の土台になります。
ただ、「大事だから、たくさん飲めばいい」ではありません。
心臓のためにと思って、飲みすぎている方が、実際にいます。
目安は、体重×30ml
体重60kgなら、1日1.8L。これが基本の計算です。
ここに、汗をかいた分を足します。まだ暑い日が続く9月は、汗で失う量が増えるので、2〜2.5Lまで増やしてかまいません。食事から入る水分は、この計算とは別に考えてください。
一方で、3.5Lは飲みすぎです。腎臓の処理が追いつきません。「たくさん飲むほど良い」と思って量を増やしてきた方は、一度、自分の体重で計算し直してみてください。思っていたより少ない数字が出るはずです。
量より、「脱水になる時間を作らない」ほうが大事
1日の合計量ばかり気にしている方が多いのですが、私がいちばん気にしてほしいのは、脱水になるタイミングを作らないことです。
体の中の水分が減った瞬間、いろんなものが濃くなります。血液も濃くなり、循環が滞りやすくなる。固まりやすいものは固まりやすくなる。厳密なエビデンスというより、体の中で起きていることのイメージとして、そう捉えてもらっていいと思います。
朝起きてから昼まで一滴も飲まず、午後にまとめて1Lを飲む。合計量は足りていても、午前中はずっと脱水気味です。同じ2Lでも、一度にまとめて飲むのと、分けて飲むのとでは、体の中の動きがまったく違います。
飲み方のコツは、「摩擦を減らす」こと
「何時に何ml」というような細かいタイミングは、私は指定しません。決めても続かないからです。代わりに、できるだけまんべんなく、無理なく飲める環境を作ることを勧めています。
- 目の前に置いておく。飲もうと思って立ち上がる、その一手間があるだけで飲まなくなります。手を伸ばせば届く場所に置く
- 透明なボトルにする。飲んだ量が外から見えると、「今日はまだ半分か」と自分で気づけます。数えなくていい
- 常温にする。冷たいと一気に飲めず、量も入りません。常温なら少しずつ、こまめに飲めます
- 中身は水かお茶。私自身は水素水を飲んでいますが、必ずそうする必要はありません。続けられるものでいいです
飲み方を変えるのに、根性はいりません。飲みやすい場所に、飲みやすい状態で置いておく。それだけで、脱水の時間は自然に減っていきます。
水分を控えたほうがいい方もいます
ここは線引きをはっきりさせておきます。
心不全と診断されている方、主治医から水分の量を指示されている方は、そちらが優先です。この記事の目安を当てはめないでください。飲んでいい量は、必ず主治医に確認してください。
診断はされていなくても、次のようなサインがある方は、飲む量を増やす前に受診で確認してほしいと思います。
- 両足がむくんでいる(片足だけでなく、両方)
- まぶたがむくむ
- 横になると息苦しくなり、座ると楽になる
とくに3つ目は、心臓の働きが落ちているときに出ることがある症状です。「水を飲めば良くなる」と考える前に、確認が先です。
主治医と話すときのコツをひとつ。自分が1日にどのくらい飲んでいるかを、先に把握しておくことです。「今1.5L飲んでいて、こういうむくみがあります」と伝えられると、医師は判断がしやすくなります。飲んでいる量が分からないと、むくみの原因が水分なのか別のものなのか、切り分けができません。先生も、はっきりした正解を持っているわけではないことが多いのです。だからこそ、こちらが材料を揃えて、一緒にすり合わせる。それが医療をうまく使うということだと思います。
まとめ
水分の目安は体重×30ml。暑い時期は汗の分を足して2〜2.5Lまで。3.5Lは飲みすぎです。合計量より、脱水になる時間を作らないことが大事で、そのためには目の前に、透明なボトルで、常温で置いておく。心不全がある方、両足やまぶたのむくみ、横になると苦しい症状がある方は、量を増やす前に主治医に確認してください。
※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。持病のある方や水分制限を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。