心臓の不安が家族にも広がってしまう時

「また脈がどうこう言っている」。家族からそう言われて、もう二度と話すまいと心を閉じた方がいます。一方で、「私の料理のせいで夫をこんなことにしてしまったのかもしれない」と、毎日の食事に全力を注ぐあまり、ご自身が追い詰められてしまった奥様もいます。

心臓の不安は、本人だけのものではありません。家族もまた、どう声をかけていいかわからないまま、静かに傷ついていることがあります。

「先生が大丈夫と言ったから大丈夫でしょ」の裏にある孤独

個別相談の中で、ご家族の反応は大きく2つに分かれます。

ひとつは、ご本人が「まあ、なんとかなるだろう」と構えていないのに、ご家族の方が自分を責め始めるケース。食事を全部変えようとしたり、外出を止めたり。心配から来ている行動なのですが、本人にとっては行動を制限されていると感じ、窮屈さだけが残ります。

もうひとつは、その逆です。ご本人は毎日のようにドキドキしたり、ドクンと強く打つ感覚に怯えているのに、ご家族は医師の「様子を見ましょう」を根拠に、「先生がそう言ってるなら大丈夫じゃない?」と。治療はしたはずなのに、症状は確かにそこにあるのです。それを「気にしすぎ」として扱われると、本人はますます一人になっていきます。

先日の相談で、ある方がこう話されました。「誰にもこの怖さをわかってもらえないんです。家族にも、病院の先生にも」。20代から動悸に悩まされ、何度検査をしても「治療するほどではない」と言われ続け、相談すること自体を諦めてしまっていた方です。

さらに厄介なのは、ご本人の不安が、いつの間にか家族にも伝染してしまうこと。かつて「また始まった」と少し疎ましく思っていた側の方が、時間が経って、今度は自分がその症状を訴える側になっていた——そんな声を、何度も聞いてきました。誰も悪くないんです。ただ、どう支えたらいいのか、その方法がわからないだけなのです。

「一緒に悩む」のではなく「そのまま認める」

ここで大切なのは、家族が本人と同じ深さまで一緒に沈まないことです。

ご本人が「このまま死んでしまったらどうしよう」と口にした時、「そんなこと言わないで」と否定したくなる気持ちはとてもよくわかります。ただ、否定は本人にとって「やっぱりわかってもらえなかった」という孤独を、かえって強めてしまいます。

私が現場でお伝えしているのは、感じていることを、まずそのまま認めてあげるということです。「死んでしまうかもしれないと思うくらい、怖いんだね」。それだけで十分です。解決しようとしなくていい。良い悪いを判断しなくていい。ただ、そう感じているという事実だけを認めてあげてください。

そして、本人が少し落ち着いているタイミングで、「どうしていけばいいと思う?」と一つだけ問いかけてみてください。それだけで、不安の中でぐるぐる止まっていた思考が、少しだけ行動の方へ向き始めます。

家族にできることは、答えを用意することではありません。本人が自分で考えるための余白をつくること。それだけでいいのです。

家族の関わり方が変わると、症状の感じ方も変わる

実際に、ご家族との関わり方が少し変わったことで、ご本人の症状の感じ方まで変わっていったケースを、これまで何度も見てきました。

ある方は、両親を立て続けに亡くし、一人暮らしになってから動悸がひどくなりました。一人で症状が出ると、恐怖は何倍にも膨れ上がります。その方が最初に言ったのは、「誰かに話を聞いてもらえるだけで、こんなに楽になるとは思わなかった」でした。家族でなくても、「自分の怖さをわかってくれる人がいる」——その事実だけで、脳の過剰な警戒が少し緩むのです。

「しっかり支えなければ」と気負う必要はありません。ただそばで、感じていることを認めてあげる。それだけで、家族という一番身近な存在が、心臓ケアにとって大きな力になります。

まとめ

心臓の不安は、本人だけでなく家族の間にも広がっていきます。大切なのは、一緒に同じ深さで悩むことではなく、感じていることをそのまま認め、本人が自分で考える余白をつくること。そして、「わかってくれる人がいる」という安心感そのものが、脳の警戒を和らげる最大の力になります。

その不安、ご家族だけで抱え込まないでください

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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

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