胸の「ドキッ」は事実、「やばい」は脳の解釈

同じ「ドキッ」でも、まったく気にならない日と、怖くてたまらない日があります。

この差はどこから来るのか。心臓の動きが違うから、ではありません。その感覚に、脳がどんな意味をつけたかの違いです。

順番を分解すると、こうなっています

  1. 胸で「ドキッ」が起きる
  2. その感覚が脳に届く
  3. 脳が意味をつける(「やばい」「また来た」「これは嫌なやつだ」)
  4. 意味づけが感情になる(怖い)
  5. 感情が自律神経を通って、体に返ってくる(動悸・汗・息苦しさ)
  6. その体の変化が、また2に戻る

ここで大事なのは、1は事実で、3は後から足されたものだということです。

「ドキッとした」は起きたこと。「やばい」は、そのあとに脳が付けた解釈。この2つは別のものです。

同じ道を通るほど、道は太くなる

脳は学習する臓器です。「ドキッ→やばい」というルートを何度も通ると、その道はだんだん太く、速く、自動になっていきます。高速道路のようなものです。

3年間毎日通れば、意識する間もなく到着します。「怖がらないようにしよう」で止まらないのは、そのためです。もう考えて通っている道ではないからです。

これは、心が弱いという話ではありません。体を守ろうとした脳の働きが、強くなりすぎただけです。

分けるコツは、「先に全部出す」こと

「事実と解釈を分けましょう」と言われても、最初はうまくできません。当然です。ドキッとした瞬間には、もう「やばい」がくっついて出てくるからです。

私が相談の中でやっているのは、まず症状を細かく聞き切ることです。どんな感じか。どのくらい続くか。何が怖いか。そのとき何を考えたか。全部出してもらいます。

すると、出てきたものは事実と解釈がごちゃ混ぜの状態です。「胸がドンとなって、これは絶対に悪いやつで、このまま止まるんじゃないかと思って、汗が出て」。ここに、事実(ドンとなった、汗が出た)と解釈(悪いやつ、止まる)が混ざっています。

混ざった状態で出しきってから、「じゃあ、これを分けてみてください」と渡します。ひとりで頭の中で分けようとするより、一度全部外に出してから仕分けるほうが、はるかにやりやすいのです。

これは紙でもできます。ドキッときたあと、頭に浮かんだことを全部書く。書いたあとで、「実際に起きたこと」に丸をつける。丸がつかなかったものが、脳が足した解釈です。

消そうとしないでください。止めようともしない。ただ、分ける。それだけです。

分けられるようになると、何が変わるか

実際に、この仕分けができるようになった方には、共通した変化が出ます。

不安と、距離が取れるようになります。

「怖い」の中にいるのではなく、「今、自分は怖いと感じているな」と眺められるようになる。自分がどう感じているかを、客観的に見られる。すると単純に、怖くなくなっていきます。

ここで正直にお伝えしておくと、症状そのものは、あまり変わらないことも多いです。ドキッは、たまに来ます。でも、怖くなくなる。怖くなくなると、控えていた外出も運動も、できるようになっていく。「症状は変わらないのに、何でもできるようになりました」という言い方をされる方が、実際にいます。

もちろん、心臓にいい生活習慣や運動も、本気でやってもらいます。脳の使い方と、体へのケア。この両輪です。片方だけでは、車は前に進みません。

期間の目安としては、私のサポートでは標準で2〜3ヶ月、早い方で1ヶ月くらいです。不安を抱えてきた期間が長く、脳の癖がかなり強くなっている方もいらっしゃいますが、そういった方でも2〜3ヶ月のうちに前向きな変化が出てくるのを、何度も見てきました。

まとめ

胸の「ドキッ」は事実、「やばい」は脳が後から足した解釈です。同じ道を通るほど反応は自動化していきますが、それは脳が体を守ろうとした結果で、弱さではありません。分けるコツは、まず全部出してから仕分けること。消さず、止めず、分けるだけ。分けられるようになると不安と距離が取れ、症状が変わらなくても怖くなくなっていきます。目安は2〜3ヶ月。脳と体、両輪で進めていきます。

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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

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