「毎回、これで死ぬんじゃないかって思うんですよ」
そう話す方の声が、明るいことがあります。笑いながら、少し早口で、あっけらかんと。初めて聞いた人は、たいして困っていないのだろうと受け取ります。
でも、話している内容は、3年間毎日続いている恐怖の話です。
明るさは、そこまで耐えてきた証拠
なぜ明るく話すのか。理由は2つあると私は考えています。
ひとつは、そのまま話すと自分がもたないからです。恐怖を恐怖の温度で語り直すと、話しているあいだにもう一度それを体験することになる。だから、少し離れたところから、他人事のように話す。これは防衛です。
もうひとつは、相手に気を遣っているからです。深刻に話せば、相手は困る。困らせたくない。だから軽くする。
明るさは、耐えてきた時間の長さと、人への配慮の両方でできています。
「大げさじゃない?」が積み重なると、こうなる
家族に伝えても「また脈がどうこう言ってる」と流される。職場では、上司と2人きりの事務所で「苦しい」とは言い出せず、そっと深呼吸をしてやり過ごす。その間、手も頭も止まっている。
こうしたやりとりが積み重なると、人は話し方を最適化していきます。
軽く言えば場が壊れない。だから軽く言う。
軽く言うから、伝わらない。
伝わらないから、また一人で抱える。
このループの中にいる方は、自分が明るく話していることに、もう気づいていないことも多いです。
私は、絶対に笑いません
「心臓が止まったらどうしよう」「心筋梗塞につながったらどうしよう」「朝起きたら死んでたら嫌だな」。こういう話を、冗談みたいに笑いながらされる方は、実はかなりいます。
そのとき私は、絶対に笑いません。
その笑いは、面白いから出ているものではないからです。自分を守るために笑っている。笑っていないと、自分を守れない。だから、そこは必ず真剣に聞きます。そして「そこまでしんどいんだな」と受け取ります。
聞き方を変える、というより、笑わないと決めていると言ったほうが近いかもしれません。相手が軽く話しても、こちらは軽く受け取らない。それだけで、話の温度は変わっていきます。
本音が出た瞬間のこと
ある方は、夜に症状が出ることが多いという話を、終始笑いながらされていました。「夜になるとドキドキして、不安なんですよね。どうにかしたいんです」と、明るく。
その方には、もうひとつ別の話がありました。親御さんが、ある朝、目を覚まさないまま亡くなっていた。心臓が突然止まった、ということでした。
夜に症状が多いという話と、親御さんがそういう最期だったという話。この2つを、その方は別々に、つなげずに話していました。そして、笑っていました。
私は、一切笑わずに聞いていました。そのうちに、「本当は何を恐れていますか」と聞いていく中で、少しずつ言葉が変わっていきました。本当は、自分も同じように、急にこの世からいなくなるのが怖い。夜が来るたびに、そのことを考えている。そう教えてくださいました。
それを口にするのは、かなり勇気のいることです。でも、口にした瞬間に、変わることがあります。
言葉にすると、恐怖は一歩離れた場所に置ける
「怖い」と口にすることは、その恐怖にラベルを貼ることです。ラベルを貼った瞬間、それは「自分の中心にある、名前のない恐怖」から、「一歩離れたところにある、名前のついた恐怖」に変わります。
正体が分かったわけでも、消えたわけでもありません。でも、少し離れて眺められるようになる。それだけで、心は思っている以上に軽くなります。
明るく話してきた方ほど、この一歩が大きいです。ずっと軽く話してきたぶん、本当の温度で口にしたときの変化も大きいのです。
まとめ
深刻な心臓の不安ほど、明るく話してしまうのは、自分を守るためと、相手を困らせないためです。それは耐えてきた時間の証拠でもあります。私はその話を、絶対に笑わずに聞きます。軽く話されても軽く受け取らない。そうしているうちに本音が出てきたとき、恐怖にラベルがつき、一歩離れた場所に置けるようになります。もし今、笑いながら心臓の話をしているなら、一度だけ、笑わずに話せる相手を探してみてください。
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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。