「来週、心臓のカテーテル検査をします。そのあと病名が決まります。それから相談することはできないのでしょうか」
実際に届いたご相談です。
とても真面目な考え方だと思います。病名が決まる → 治療方針が決まる → それから動く。順番として、まったく間違っていません。
ただ、ひとつだけお伝えしたいことがあります。検査を待っているあいだの時間も、使える時間です。
「決まらない時間」がいちばん疲れる
別の方が、こんな言葉を残してくれました。「決まらない状況が、一番疲れます」。
これは実感だと思います。痛みや発作そのものより、どうなるか分からない期間のほうが、人を消耗させます。
しかもこの期間は、思っているより長い。心臓の検査は、受診して「検査しましょう」となってから、検査の予約まで数週間。検査を受けてから、結果の説明までまた数週間。「もう少し詳しく調べましょう」となれば、さらに数週間。これだけで1〜2ヶ月はすぐに経ちます。入院や治療が絡めば、3〜4ヶ月かかることも珍しくありません。
そしてこの期間、たいていの方は何もしないまま過ごします。「結果が出るまでは動かないほうがいい」と考えるからです。
何もしないでいると、実際に何が起きるか
ここは、私が現場で見てきたことをそのままお伝えします。
検査を待っているあいだ、多くの方が周りにこう話しています。「今、心臓の検査をしていて」「心臓で病院にかかっていて」。数ヶ月にわたって、繰り返し。
すると何が起きるか。自分で自分に、レッテルを貼るのです。「私は心臓が悪い人だ」というセルフイメージが、診断が出る前にできあがってしまう。
この思い込みが厄介なのは、無意識のうちに行動を変えてしまうことです。「どうせ心臓が悪いんだから」と、つい暴飲暴食をしてしまう。お酒が増える。寝不足になる。仕事で疲れ果てるまで頑張ってしまう。自分でも気づかないうちに、心臓に負担をかける行動を取ってしまうのです。
そしてそのあとで、自分を責める。責めると、また症状が気になる。気になると、ますます「心臓が悪い」という実感が強くなる。
診断が出る前に、自分で病人をつくってしまう。この流れを、私は何度も見てきました。
検査前・診断前にできる3つのこと
では、待っているあいだに何ができるのか。私は3つ挙げます。
① どこまで体を動かしていいか、先生に聞く
検査が決まった時点で、必ず聞いてください。「検査までのあいだ、体はどのくらい動かしていいですか」。体を動かすのが怖くなって控えはじめると、いろんな意味づけがマイナスの方向に加速していきます。だから最初に、動いていい範囲を確認する。
「検査するまで分からない」と言われたら、せめて「日常生活の中で体を動かす分にはいいですか」と聞いてください。この許可があるかないかで、安心感がまったく変わります。「全然大丈夫ですよ」と言われるかもしれないし、「ストレッチくらいなら」と言われるかもしれない。どちらにしても、「ここまではいい」という線が引かれます。
② 脳の不安を、遠ざける
待っているあいだに太くなるのは、体の問題ではなく、脳の警戒回路です。「心臓が悪い」というセルフイメージを育てないこと。症状を感じたら、感情ではなく事実だけを記録する。頭の中で回り続けるなら紙に書き出す。このブログで繰り返しお伝えしている方法は、診断前でも使えます。
③ 許可の範囲で、適度に体を動かす
①で確認した範囲の中で、動くことをやめないでください。ここで注意したいのは、逆にやりすぎる方もいることです。「検査の前に体力をつけておこう」と張り切りすぎるのは違います。適度に、確認した範囲で、続ける。
入院が決まっている方へ
もし入院が決まっているなら、それは医療とぐっと近くなるチャンスです。私は病院を「保険が使える健康コンサル」だと思っています。かなり近い距離で、自分の体を専門家に見てもらえる。この機会を、ただ不安に耐える時間にしてしまうのはもったいない。聞きたいことをメモしておく、生活の中で気になっていることを伝える。医療を活用する、という姿勢で臨んでほしいと思います。
線引きだけ、先に
この記事は「主治医と経過を見ている方」「検査の予定が決まっている方」に向けて書いています。まだ調べていない胸の症状や、いつもと違う強い痛み・冷や汗・続く胸痛がある場合は、この記事より受診が先です。
まとめ
病名が決まるまでの時間は、思っているより長く、何もしないでいると「心臓が悪い人」というセルフイメージが先にできあがってしまいます。できることは3つ。どこまで動いていいかを先生に聞く。脳の不安を遠ざける。許可の範囲で適度に動く。診断を待つ時間は、止まっている時間ではありません。治療が始まったときに効果が出やすい体と心を、先に準備しておく時間です。
📖 あわせて読みたい
※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。検査や治療の方針は必ず主治医にご相談ください。