心臓ケアにおける「感情の地雷」

「毎回、今度こそ死ぬと思うんです」。ある方はそう話してくれました。驚くほど明るいトーンで。3年間、毎日のように期外収縮の発作に襲われ、「死の恐怖」が日常になってしまった方。その明るさは、辛すぎる恐怖に耐えるための防衛反応であり、周囲に心配をかけまいとする気遣いの表れでもあります。

心臓に影響を与える「感情の地雷」は、本人でさえ気づいていないことがあります。

自分への言葉が、心臓への「実行命令」になる

「今、心臓大丈夫かな」「また来たらどうしよう」「このまま死んだらどうしよう」——こうした言葉を、無意識のうちに1日に何十回も自分に言い聞かせていませんか。

このセルフトーク(自分への語りかけ)には、いくつかの典型的なパターンがあります。

  • 破局化:「このまま死んだらどうしよう」——最悪の結末に一気に飛躍する
  • 永続化:「もう一生治らないんだ」——今の状態がずっと続くと決めつける
  • 監視:「脈飛んでない?」——体の変化を絶えずチェックし続ける
  • 自責:「なんでこんな体なんだ」——自分を責め続ける

これらの言葉は、脳の中で「動悸=恐怖」という太い神経回路をつくりあげていきます。3年間毎日繰り返された結果、その回路は「高速道路」のように太くなり、一瞬で恐怖スイッチが入る状態になってしまっている方もいます。

見えにくい「地雷」を見つける

心臓に悪い影響を与える感情として、怒りや不安は想像しやすいかもしれません。でも、見落とされがちな地雷があります。それは、「健康でなければならない」という強い思い込みです。

小さい頃から病気知らずで育った方ほど、この思い込みが強い傾向があります。「健康であるべき」という前提が崩れた時、その衝撃は計り知れない。お母さんを突然亡くした方が、それ以降の期外収縮に「自分も突然死ぬかもしれない」という何倍もの恐怖を上乗せしてしまったのも、無意識の「大切な人は突然いなくなる=自分も突然いなくなるかもしれない」という意味づけが脳に刻まれたからです。

自分にとってどんな感情や場面が「地雷」になりやすいのか。日々の記録を振り返りながら、パターンに気づいていくことが最初の一歩です。

言葉を変えると、体の反応が変わる

セルフトークは、意識して書き換えることができます。

「大丈夫。これは脳が驚いているだけ」——破局化を、冷静な事実確認に。

「心臓さん、今日も動いてくれてありがとう」——敵対する気持ちを、感謝に。

「これは一時的なもの。前も落ち着いた」——永続化を、実際の体験で上書きする。

不思議なもので、この一言だけで、副交感神経が働きやすくなり、心臓の負担がふっと軽くなることがあります。朝の数分間、一日を始める前にこうした言葉を練習しておくと、不安がざわついた瞬間に、新しい言葉が自然と出てくるようになります。脳の中に、古い高速道路とは別の、新しい通り道を少しずつつくっていく。それが、感情の地雷を取り除く心のトレーニングです。

まとめ

自分に語りかける言葉は、単なる独り言ではなく、心臓や自律神経への実行命令のように働いています。破局化・永続化・監視・自責というパターンに気づき、事実の言葉、感謝の言葉、経験に基づいた言葉に置き換えていくこと。この積み重ねが、感情の地雷を一つずつ取り除いていきます。

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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。症状がある方は必ず医療機関を受診してください。

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