「運動しましょう」と言われたけれど、どのくらいの強さで、どれくらいやればいいのかわからない。しかも、運動すること自体が怖い——。ある方は、家から出るだけで動悸が起きるほどの状態から、「運動着を出すだけ」というレベルゼロから始めました。
運動にも「処方」がある
一般的な「年齢から計算する目標心拍数」の式をご存じの方もいるかもしれません。でも、心臓ケアにおいてはこの簡易式に頼るのはおすすめできません。
なぜなら、心臓に不安がある方の「安全な範囲」は、一人ひとりまったく違うからです。ここで力を発揮するのがCPX(心肺運動負荷試験)。ガスマスクをつけて運動しながら、吸った息と吐いた息を分析して、体の中の代謝をまるごと見る検査です。この検査によって、「あなたは心拍数◯◯までなら安全に運動できます」という数字がはっきり出ます。
自己流で「どこまでやっていいかわからないまま走っている」方と、CPXの結果をもとに「ここまでは大丈夫」と確信を持って動ける方とでは、脳の安心感がまるで違います。
まず固めるべきは「有酸素運動」
運動には大きく3つの種類があります。
- コンディショニング:ストレッチ、呼吸法、関節を動かす動作。運動が怖い方のスタートライン
- 有酸素運動:ウォーキング、自転車、水泳など。血管に直接良い刺激を与える
- 筋力トレーニング:負荷の強い筋トレ。余裕が出てきてから組み合わせる
優先順位は、まず有酸素運動をしっかり固めること。目安は「体が温まり汗ばむ程度、息がはずむけれど会話はできるニコニコペース」。終わった後にどっと疲労が残らないことも大事なサインです。
運動前には3〜5分かけて心拍数を徐々に上げるウォーミングアップ、終わりには5分ほどかけてゆっくりペースを落とすクールダウン。この前後のひと手間が、安全に運動を続けるための鍵です。
運動は、薬と同じくらいの力を持っている
心房細動のアブレーション治療を受けた方が、週90分以上の中等度運動を継続したところ、再発リスクがおよそ半分まで下がったという研究データがあります。運動療法とβブロッカーを比較した研究でも、運動療法単独で薬と同程度の効果が認められ、両方を組み合わせた場合が最も良い結果になったと報告されています。
中等度運動での重篤な事故が起きる確率は、数万から10万セッションに1件程度。正しく行えば、運動は思っている以上に安全なものです。
とはいえ、いきなり張り切る必要はありません。ある方は、外出が怖くて家から出られない状態から、まずは「玄関を出るだけ」「靴を履くだけ」から始めました。運動着を目につく場所に置くだけ、決まったストレッチを1つ朝の儀式にするだけ——そんなレベルゼロから、少しずつ距離と時間を伸ばしていった結果、脳に「動いても大丈夫だった」という事実が積み重なっていきました。
まとめ
運動には、その人に合った「処方」があります。CPX検査で自分の安全な範囲を知り、まずは有酸素運動を中心に、レベルゼロからでいいので始めること。運動は、正しく行えば薬と同じくらいの力を持つ、根拠のあるケアの方法です。
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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。運動を始める際は必ず主治医にご相談ください。