診察室を出たあとに、決まって思うことがあります。
あれも聞けばよかった。
3分で終わる診察。次の人が待っている空気。用意していた質問は3つあったのに、口から出たのは1つだけ。しかもいちばん聞きたかったものではなかった。
これは性格の問題ではありません。準備の問題です。
言えない理由は、たいてい「嫌がられたくない」
ある方が話してくださったことです。いつも相手の反応に気を遣ってしまう。自分は細かくて面倒なことを言っている、面倒な人と思われたくない。その気持ちから、診察で自分の気持ちを言えないでいることが多かった、と。
多くの方が、ここで止まります。
でも実際には、この方が自分の言葉で主治医に伝えてみたあと、主治医との距離はむしろ縮まり、本人も楽になったそうです。伝えたほうが、関係は近くなった。ここは覚えておく価値があります。
口で言えないなら、紙で渡す
私が勧めているのは、主治医あての手紙です。これは本当におすすめです。
理由は3つあります。
- その場で説明しなくていい。覚えていく必要がなく、緊張で飛ぶこともない
- 受付で先に渡せば、先生はカルテを見るついでに読んでくれる。そして、その内容がそのままカルテに記録として残ることが多い
- 書くことで、自分の思考が整理される。何が不安で、何を知りたいのかが、書いているうちに見えてくる
別の方は、受診の前に主治医あての手紙を自分で書き、私が添削しました。症状を①②③と整理し、それぞれについて「調べてほしいこと」を対応させて書いた手紙です。受診の前日、その方から「安心して受診できます」という連絡がありました。受診の前から、すでに変わっています。
添削で、私がよく直すところ
手紙を添削していて、共通して直すポイントがあります。
① 自分の伝えたいことばかりで、先生の思考の順番に合っていない
一生懸命に伝えようとするのは悪いことではありません。でも、こちらの思いばかりを書いても、先生は客観的なことしか返せません。医師には医師の推論の順番があります。それに合った構成にしないと、ちぐはぐになります。
② 結論が最後に来ている
結論から書いてください。「こういう不安があるので、それを確かめる検査を希望します。というのは……」という順番です。経緯から書きはじめると、先生は途中で読むのをやめます。忙しくて、最後まで読まない先生も実際にいます。
③ 具体的な検査名や薬の名前を指定している
「○○という検査をしてください」「○○という薬がいいと思います」という書き方は、普通に考えて好まれません。こちらから症状を断言したり、この検査が有効だと決めつけたりするのも同じです。
直し方はこうです。「こういう不安があるので、この不安を消すための検査をしたい」という形で投げる。検査名を選ぶのは先生の仕事です。こちらは、何が不安で、何を確かめたいのかを渡す。
嫌がられない線引き
やらないほうがいいことも、はっきりさせておきます。
- 先生を批判する。気持ちのいいものではありません
- 自分の考えだけを延々と書く
- 医学的な推論を無視した順番で書く
一方で、自分の意見を素直に書くのは、まったく問題ありません。「自分はこう感じているのですが、先生はどう思われますか」という形なら、むしろ歓迎されます。先生も人間です。リスペクトを持って、先生の意見をしっかり聞く姿勢を見せたうえで、自分の懸念を素直に出す。
コミュニケーションでいちばん大事なのは、理解して、理解されることです。先生の頭の中を理解しようとしないと、こちらが理解されることもあまりありません。お願いをするときも、意見を言うときも、「先生が読んだらどう思うか」を軸に置く。私が添削するときの基準も、そこです。
医療は「保険が使える健康コンサル」
私は、病院をそう捉えています。自分の健康を、専門家がかなり近い距離で見てくれる。しかも保険が使える。これはめちゃくちゃ便利な仕組みです。
ただ、保険である以上、ある程度決まった枠組みの中で使う必要があります。好き勝手はできない。でも、その枠の中でうまく使えば、不安を減らしていく強力な味方になります。使い方を覚えるかどうかで、心臓ケアの進み方は、はっきり差がつきます。
まとめ
「あれも聞けばよかった」は、準備で防げます。口で言えないなら、主治医あての手紙を書いて受付で渡す。結論から書き、検査名ではなく「この不安を確かめたい」という形で投げる。批判はせず、意見は素直に。先生の頭の中を理解しようとする姿勢が、理解される近道です。医療は、保険が使える健康コンサル。使い方で差がつきます。
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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。検査や治療の方針は必ず主治医にご相談ください。