動悸は、突然来るものだと思われています。
でも実際には、その手前に何かが起きている方が少なくありません。ある方は、こう話されました。「背中が張っているな、と感じたあとに、呼吸が苦しくなって、動悸につながる」。
順番があるということです。背中 → 呼吸 → 動悸。
もしこの順番が自分にもあるなら、いちばん最初の段階で手が打てます。
なぜ、背中なのか
恐怖や緊張を感じると、体は身構えます。肩が上がり、背中と首がこわばり、呼吸が浅くなる。
呼吸が浅くなると、自律神経のバランスが変わります。そして自律神経は心臓に直接つながっています。上半身の緊張は、呼吸を経由して心臓に届いている、と考えられます。
「気のせい」ではなく、体の順番として説明がつく話です。
前兆は、探しに行かない
ここで、ひとつ大事なことをお伝えします。
前兆を、探しに行かないでください。
「背中が張っていないか」と一日中チェックしはじめると、それ自体が新しい不安の種になります。心臓は一日中動いているので、探せばいくらでも「気になる感覚」は見つかります。それは前兆ではなく、探した結果です。
やることは逆です。感じたときに、気づく。探さなくても、張っているときは張っています。そのときに「あ、今、背中が張っているな」と一度気づけばいい。それだけで、次の段階(呼吸が浅くなる)に入る前に、手が打てます。
自分の順番を確かめる記録のしかた
自分にもこの順番があるのかを確かめたいなら、記録が役に立ちます。ただし、細かくやる必要はありません。
- 症状を感じたときに、そのとき体に何が起きていたかをメモする。「背中が張っていた」「肩が上がっていた」「呼吸が浅かった」。感情ではなく、体の事実だけ
- それが難しければ、1日1回、寝る前に振り返るだけでもかまいません。「今日、動悸が出たとき、その前に何かあったか」
2週間も続けると、自分なりのパターンが見えてくることが多いです。全員に背中の張りがあるわけではありません。人によっては首かもしれないし、呼吸かもしれない。自分の順番を知ることが目的です。
もうひとつ。本当に不安に襲われているときに記録を取ると、それだけで気持ちが楽になることがあります。書くという行為が、不安の中から一歩外に出る動きになるからです。
張りをゆるめる:肩甲骨ごと回す「肩回し」
私が「コンディショニングの基本4種」としてお伝えしているものの中に、肩回しがあります。ただ肩をぐるぐる回すのではなく、肩甲骨ごと回すのがポイントです。
やり方
- 両手の指先を、それぞれ同じ側の肩に軽く触れる(肘は曲がった状態)
- その肘で、大きな円を描くように回す。肩だけでなく、肩甲骨が背中の上で動いているのを感じる
- 横から見ても円、正面から見ても円になるように。平面ではなく、立体で回すイメージ
- 前回しと後ろ回し、両方やる
回数を決めるより、「肩甲骨が動いている感覚があるか」を基準にしてください。5回でも動いていなければ意味がなく、3回でも肩甲骨が大きく動いていれば十分です。背中の張りに気づいたとき、その場でやる。これだけで、呼吸が入りやすくなります。
やってはいけないこと
- いきまない。息を止めて力を入れる動作は、心臓に負担がかかります。回しているあいだ、呼吸は止めない
- 痛みが出る範囲まで無理に回さない。動く範囲で、大きく
順番の最初に、手を置く
動悸そのものを止めようとすると、力が入ります。力が入ると、また背中が張る。この循環の中で戦っている方が多いです。
でも、順番の一番最初——背中の張り——に気づいて、そこをゆるめられるなら、動悸まで行かずに済むことがあります。動悸を止めるのではなく、動悸に至る道の入口で、そっと手を置く。それが、この記事でお伝えしたかったことです。
まとめ
動悸には、背中→呼吸→動悸のような順番がある方がいます。前兆は探しに行かず、感じたときに気づく。自分の順番を知りたければ、症状のときか寝る前に、体の事実だけを記録する。背中の張りに気づいたら、肩甲骨ごと立体的に回す肩回し。いきまず、呼吸を止めずに。順番の入口に手を置けるようになると、動悸との距離が変わります。
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※この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を行うものではありません。運動を始める際は必ず主治医にご相談ください。